かたおかにっき

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この世の果てで恋を唄う少女YU-NO◆感想

「物語」という名の迷宮へ……

 

発売から20年近くがたった今でも、名作と名高いこの作品。

私もギャルゲ好きとして興味はあったものの、残念ながら遊べるハードを持っておらず、2016年発売予定のリメイクを心待ちにしていました。

 

しかし。

 

先月行われたTGSでOPを見て、体験版をプレイしたところ、「今すぐにでもやりたい!」という気持ちがおさえられなくなってしまいまして。

数日中に通販でセガサターン版を購入し、片道2時間のところに住んでいる友人に本体を借りてきました。それだけ、強く興味をひかれたのですよね。

 

ただ、正直なところ「あまりにも古すぎるし楽しめないのではないか」という不安もありました。古い作品には「思い出補正」がつきもの。だから、今の評価もこれによるところが大きいのではないかと。

 

YU-NOはそんな私の不安を、見事に裏切ってくれました。

 

謎が謎を呼ぶ、ミステリアスな展開。

物語や演出と密接にリンクしているA.D.M.S.システム。

マップの隅から隅まで用意されている、遊び心にあふれるテキスト。

 

今、この時代でもやる価値のある、素晴らしい作品でした。

 

エンディングを見て、フローチャートの達成率を100%を達成した今でも心地のよい余韻が残っていて。

ふと空いた時間ができると、この作品のことを考えてしまっている自分がいます。

 

まだ遊んだことのない、特に同年代の方には「古くともこんなにおもしろい作品があるんだ!」ということで、是非ともおすすめしたい1本です。

 

PC98やセガサターンを持っていなかったとしても、来年にはリメイク版が発売されることですし。

 

これ以下は物語の核心に触れた重大なネタバレがあります。ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

A.D.M.S.システム

YU-NOを語るうえで、やはりこれは外せませんよね。

今遊んでも新鮮に感じられる、素晴らしいものだと思っています。

 

……まあ、90%くらいからめちゃくちゃつらかったんですけど。というかピクロス&銀のメダル&書斎の宝玉がどうしても取れなくて攻略見ちゃったんですけれども。

ピクロスは自力で解いた人がどれほどいたのか気になります。

当時はインターネットもあまり普及していなかったようですし、意外と多かったのでしょうか。リアルタイムで遊びたかったなぁ。そして語りたかった。

 

上でも書いたように、物語や演出と密接に関わっていたのもすごいところ。

こちらは各ルートの感想のほうで触れていきたいと思います。

 

宝玉の使いかたしだいで、プレイ時間が大きく変わってくるというのも、個人的には攻略のしがいがあっておもしろかったなと思っています。

宝玉ロードをしたあとに宝玉セーブをしないまま進めて「ああああああ!!」となったことも数えきれないほどありましたが、それも今ではいい思い出です。

 

こまめなセーブは大事。

 

A.D.M.S.だけでも1つの記事が書けてしまいそうですが、あんまり長くなってもいけないのでこのへんで。

 

 

登場人物

このゲーム、登場人物が男女問わず濃い。みんな濃い。

北条から梅さんから留置場のデブまで、だれもが印象に残っていて、みんなそれぞれ語りたくなるような魅力を備えていましたね。

なかでもお気に入りは広大とセーレス。

 

広大はかっこいい。とにかくかっこいい。

もし自分が親父と呼ばれるようになる日がくるのなら、こんな人になりたいものです。

同じ男として、彼の生き様にあこがれずにはいられません。

最初の妻、ケイティアをずっと愛し続けているというのもポイント高し。

 

そのわりには、ちょっと女性との関係を持ちすぎな子もしますけれども。

 

セーレスはかわいい。とにかくかわいい。

この作品で一番好きなキャラクターです。

ただ、彼女を思い出そうとすると、同時にその最期まで思い出してしまうのが本当につらいところ。

SS版でははっきりと描写されていなかったんですが、やっぱり彼女はレ◯プされていたんですね。最愛の人にそんな姿を見られながら、舌を噛みきって自殺だなんて、そんなの悲しすぎやしませんか。でも、そんな強さを持つ彼女が大好き。ああもどかしい。

 

 

現代編

大まかな順番としては

神奈→亜由美→香織→澪→美月といった感じでプレイしていったように記憶しています。

 

神奈と亜由美さんを救えたときはうれしかったなー。

特に、亜由美さんは1周目で避けることのできない死が待っていたために、その喜びもひとしおでした。まったくずるい見せ方をしてきますよね。

豊富になぐるコマンドを連打したり、木刀や鉄の剣を使おうとしたのは私だけではないはず。

 

香織はたくやを助けたかと思えば、今度は利用してきたり、とらえどころのない女性でしたね。そんなところが彼女の魅力なんでしょうか。

 

澪はいろいろな問題を抱えているヒロインたちの中で、唯一安心して萌えられる貴重な娘でした。

まあ父親の汚職問題だったり、結城による新聞騒動なんかもありましたけれども。

 

そうそう、結城といえば、説明書に「そんな軟弱そうな結城にも、男の出番はやってくる!」と書かれていましたが、あれってどこを指していたんでしょうか?

宝玉のところ? でもあのルートだと彼は死んじゃいますよね?

たくやにはいいように使われて、澪にも振りむいてもらえず、見せ場もなし。不憫。強く生きてほしい。

 

美月はまさに悲劇のヒロインという言葉がぴったりの女性でしたね。

個別で彼女が撃たれたあと、たくやも絵里子先生も意味深なことを言うもんですから、「宝玉を使わずにもう1周したら救えるんじゃないか?」なんて思って、私はもう1周してしまいました。あれでいったい何時間ロスしたのだろう。

 

 

異世界編

まったく隠す気のないOP、TGSでの配布物、リメイク版の公式サイト(後者2つにはちょっと怒ってます)によって想像はついていましたが、それでもやはり解放されたときは感動しましたね。

現代編だけでも50時間くらいかかっていましたし。

 

異世界編は、やはりセーレスとの出会いから別れまでが心に残っています。

現代編でいくつもの並列世界を渡り歩き、何度もつらい思いをしてきたたくやが、ようやく好きな人との幸せな時間を得られて、よかったなあと。なんというか、親のような気持ちで彼らを見ていました。

 

だからこそ、「セーレスがあの手紙に気づかなければ」「たくやがあの手紙を出させていなければ」と思わずにはいられません。その場合に、世界がどうなっていたのかは分かりませんけれども。

 

異世界編は一本道ということで、現代編のようにたくやを動かすことができなかったため、「やめろやめろやめろ!」と言いたくなるような場面がたくさんありました。

 

砂漠にセーレスを置いてきたり、ユーノが寝てる横で行きずりの女性と行為におよんだり、ユーノの予感を無視して神殿に入ってしまったり、クンクンを食べたあとにアマンダの行為にふけったり。

 

……たくやくんはっちゃけすぎでは。

 

なかでも、アマンダとの行為はちょっと受け入れがたいものがありました。彼女をなぐさめるためとはいえ、さすがにやりすぎではと思ってしまいます。危機的状況に置かれたことで、子孫を残そうという生物としての本能に突き動かされたのでしょうか。

 

逆にユーノと行為に及んだことに関しては、個人的にはすんなり受け入れられたのですけどね。倫理的な問題はともかく。

 

彼女は世間を知らず、たくや以外の男性ともほとんど関わりを持たずに生きてきたわけで。

そんな状況で育ったのならば家族愛を恋愛と勘違いしてもおかしくないんじゃないかなと。

 

たくやもたくやで、娘と関係を持つことに葛藤はしていましたし。

 

しかしこの点はリメイクでどう扱われるのかが気になるところ。

やはり家族愛といった形で落ち着くのでしょうか。

でもそれだとタイトルに違和感が出てきてしまうような。うーん。

 

あとは、亜由美の最期は切なかったですね。

広大がケイティアを愛し続けていると知ってもなお、彼のことを愛し続け、さらには世界を守るために尽力し、命を落としていった彼女。

現代編にハッピーエンドがあって本当に良かったと思います。

 

 

疑問点

プレイ後にいくつか疑問点が残りましたので、とりあえず覚え書き。

 

①ユーノが樹につけた名前

やはり「セーレス」でしょうか?

「すべての事象のはじまり」=「母」=「セーレス」という連想することも可能ですし。

 

しかし、ユーノは「セーレスは私の心のなかで生きている」という内容の発言をしているため、彼女の名前を樹につけるというのは、いささか考えづらいような気もします。

 

「亜由美」「クンクン」というのも考えられるでしょうか?

前者に関しては、たくやの義母であること、そして命を張って世界を守ったこと。

後者に関しては、親友であったこと、そしてたくやの話しぶりからクンクンがたくやを守ってくれたことを察した、ということが理由として考えられます。

 

亜由美はともかく、クンクンはすごいこじつけのような気もしますが。

 

②セーレスは本当にユーノの心の中に生きているのか

単純な疑問。

生きていると思ったほうが、幸せではありますね。

 

③セーレスはいつから巫女の資格を失っていたのか

アイリアの死に際して言葉を発してしまったときなのか、それともたくやと関係を持ってしまったときなのか。

そして、巫女の資格を失っていたならばなぜ話そうとしなかったのか。

そもそも、処女でなくてはいけない理由はあるのか。

 

④「この世の果てで恋を唄う」はどこを指しているのか

並列世界のしくみについて、1周では理解できなかったため、ここも気になりました。

これはすべてが解決したあと、たくやといっしょに「この世の果て」に行ったユーノが恋を唄っている、という解釈でいいのでしょうか。

 

 

⑤広大はどうやって「歴史の観察者」となったのか

 

ぱっと思い浮かんだのはこのくらいですね。

もう1周するなり考察を読むなりして、どうにか理解したいものです。

 

 

YU-NOは1つの物語として完結していながら、深い考察や想像の余地を残していて、だからこそ今でも愛されて続けている作品なのかなと、そう思いました。

 

そして、なんというかこう、感性にびびびっと訴えかけられるような作品でしたので、これを機会に並列世界とか、因果律とか、いろいろ勉強してみたいですね。